もう直らない壊れものの話



いつまでも、いつまでも続くものだと思っていた。
お前が俺から離れられるはずがないと、そう思っていた。

目が覚めて、一番に考えるのはお前のことだ。
夜眠る前、思い浮かべるのはお前の顔だ。
いつも、いつだって、俺はお前でいっぱいだった。
お前も、そうだったはずだ。


何がいけなかったんだ。何が。
消えろと言ったことか。お前など要らないと言ったことか。
お前が俺の名を呼んでも、振り向かなかったことか。

何が良くて、何が悪かったのかわからない。
お前はいつも笑っていた。何があっても笑っていた。
俺を好きだと言って、笑っていたじゃないか。

こうしてお前を想っても、もうこの想いは届かない。
涙さえ流せない俺は、冷たい人間なのだろうか。
今でもお前を求めている。お前を求めて、この身を焦がしているというのに。
いつまで苦しみ続ければいい。この先、いつまで。
それともお前は、永遠に許してはくれないのだろうか。


俺の半身は、どこへ行った。
この空虚な世界には、何もない。俺以外、何も。
虚無感ばかりが通り過ぎ、俺を地獄の底へと突き落とす。

今ならわかる。
お前がいた世界は、華やかだった。
お前が世界の色だった。お前が世界の光だった。
色をなくした世界が、光をなくした世界が。闇しか残らない世界が、これほど恐ろしいものだとは。
俺はこれから、どうやって生きていけばいい?



俺以外の男に笑いかけるお前を見て、俺に見向きもしないお前に怒りが募って。
俺はお前に残酷なことを言った。
戯れのつもりだった。だから笑って言えたのだ。
お前も笑っていた。笑ってうなずいた。

何の冗談だ。全く笑えない。



その日、お前は、俺の前から永遠にいなくなった。



冷たくなったお前は、ただの容れ物だった。
その空っぽの身体は、俺の頭に語りかけた。
「罪を背負って、『死ぬまで』死ぬな」と。

死刑を宣告された方が、どれだけ楽だっただろう。
今、お前はここにいない。俺を愛したお前は、もう、ここにはいないのだ。
愛する者に愛されない惨痛は、想像を絶するものだった。
お前はいつも、これほどまでに苦しんでいた。

お前が消えたその瞬間に、俺の心は死んだ。
だが、俺は今、生きている。
お前を求める死んだ心が、俺に「死ぬな」と責め立てる。
お前の望みを叶えるため、俺は死ぬまで死にはしない。

もう、二度とないのだ。
その瞳が、俺を映すことは。その声が、俺を呼ぶことは。



だから俺は、「生きない」ことを選んだ。
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